去年に続く弾き語りツアー、そのファイナルのステージだ。
序盤は、新調したというジャズ・ギターを抱え、本人曰く「40過ぎて、いきなりバイクの免許を取る人がいますけど、ああいう感じですよね。人生でやり残したことを始めるっていう」ということで、先生について習い始めたというジャズ・マナーの演奏によるパート。まあ、本人が「ジャズ・ビギナー」と称したのもあながち謙遜ではない感じだったが、ステージが進んでいくなかで、そのジャズ・ギターと、リゾネーター・ギター、ワイゼンボーン・ギターを曲ごとに持ち替えて演奏する姿を見ていて、80年代末に渋谷公会堂で見たライ・クーダーとデビッド・リンドレー2人だけのステージを思い出した。あのときは、2人を取り囲むように様々なタイプのギターが並び、それをまさに曲ごとに二人がそれぞれ持ち替えて演奏していた。この日のライブで聴こえてきた音楽も、その二人のステージに通じるもので、それはアメリカ音楽の歴史に立ち入って、ジャズやカントリー・ブルース、あるいはラグタイムといったスタイルを踏まえながら、濃厚な情感を描き出しと同時に深い郷愁を感じさせるものだった。古田たかし40周年記念ライブで民生が「接吻」を歌ってくれたお返しだと言って披露した「野ばら」が個人的には大いに盛り上がったが、ダブルアンコールで歌った「夜をぶっとばせ」にはあらためて“いい曲だなあ”と思わせられた。