黒沢ファンにとってはすっかり恒例となった感が強い年末のグローブ座公演。開場時間のロビーで話をするお客さんたちの表情は例えば年に一度の同窓会での再会のシーンのようで、かく言う僕もこの公演を1年の最後のライブにして数年が経った。
“Rock’n Roll Band Without Electricity”と題したこの日は、今年ニュー・アルバムを携え全国ツアーを行ったバンドにヴァイオリンを加えた編成でエレクトリックでない楽器を演奏する 、いわゆるアンプラグド・スタイルでのステージとなった。2013年は彼にとって4年ぶりにバンド編成でツアーを行った年だから、その締めくくりにはやはりそのバンドとステージに立つのが相応しいし、かと言ってそのままバンドで演奏すればツアーのアンコールのようになってしまう。しかし、いつも“次の黒沢音楽”を予感させるような演奏を披露してきたこのグローブ座公演の性格を考えれば、ヴァイオリンを加えたアンプラグド・スタイルというのはじつに興味深く、そして示唆的とも言えるだろう。
ステージが進んでいくなかで、演奏の編成はいろいろな組み合わせで行われ、しかし一貫しているのは楽曲の骨格をオリジナル・バージョン以上に印象的に表現してみせるというところ。アンプラグド・スタイルだから、単純にメロディーやコード感が聴き取りやすくなっているわけだが、そうしたスタイルが与える印象以上に個々の楽曲の個性を押し出す演奏ぶりがおそらくは現在の黒沢の意識を象徴しているのだろう。先のバンド・ツアーのファイナル公演の印象とも重なるその姿勢は“次の黒沢音楽”がこれまで以上に楽曲主義に向かうことを予感させて、なんともうれしいステージだった。
ところで、この日もスマホでの撮影/録画がOKだったわけだが、この日のように椅子席でゆったり聴くような状況だと、先のツアーのとき以上に撮影のことでなにやらワサワサしている人のことが気になってしまう。僕の個人的な問題なのかもしれないが、”録音フリー/撮影フリー”問題については2014年にはさらに考えることになるのかもしれない。