浜崎貴司が続けている弾き語りライブ対決シリーズ”GACHI”シーズン3のステージ。今回は、バンドのフロントマンというイメージがひと際強いボーカリスト、トータスとの対決ということで、いよいよバーリ・トゥード的な展開になった。
というのは、先にソロ演奏を披露したトータスが、オーディエンスのエンジンを十分に温めた後、最後の曲のリフを弾き始めると、それに応えて客席から手拍子が起こる。そこで、トータスはさらにそのリフのフレーズをみんなで歌うことを求めながら楽器を置き、マイクをスタンドから取り外してステージ前に出てきた。つまり、オーディエンスの歌声に乗ってハンドマイク片手にパフォーマンスを披露する、完全なバンド・スタイルとなったのだった。それは、言わば落語会でコントを始めたようなものだが、大きな笑いを取ったほうが価値という観点から見れば、これは全然アリだし、さらに言えば客席を思い切り鳴らして、それに乗ってシャウトするという弾き語りのスタイルなのだと言えば、これはもう完全にトータス流というか、彼ならではの弾き語りであると言えるだろう。
おかげで、その後に登場した浜崎の弾き語りはいつにも増してシンガーソングライター然として感じられ、彼の内省感も際立つステージになった。印象的だったのは♪自分なんて見たくない♪と歌う新曲「ショーウィンドーの影」で、両者の個性の鮮やかなコントラストがそれぞれの自画像を浮き彫りにする結果にもなったと思う。
その上で、そんなにも違って感じられる二人の歌が、二人ともに敬愛する忌野清志郎の曲が持つ愛に触発されるようにして歌の包容力という共通点が最後に押し出されて感じられたことが素晴らしく、またなんとも心地良いステージだった。