アルバム『HORN AGAIN』を携えてのツアーの終盤、加えて東京では5公演目となるステージである。
というわけで、山中いわく「マニアックな曲」として『LITTLE BUSTERS』や『RUNNERS HIGH』からの曲を久しぶりに披露したりしたわけだが、そうしたこととは別に、ステージ全体の印象がツアーの初めに渋谷で見たときとはちょっと違っていて、不思議なというか、これでとはひと味違う爽やかさのようなものを感じた。もちろん、渋谷で見た時点とは、世の中の状況や人々の意識がまったくと言っていいくらい変わってしまっているわけだが、それにしても、この日感じられたステージの印象の変化は”その影響で”というような単純な話でもないように感じられた。
山中がMCで「ツアー前のモヤモヤした気分がツアー1本目の水戸のステージの最初の音を出したときに吹っ切れて、そこからもう楽しくなっちゃったんだよ」と語っていたけれど、この日の彼らのステージは基本的には”やっぱりthe pillowsでライブをやるのは楽しいなあ。音楽っていいよな”みたいな感覚をあらためて実感したツアーだったのではないかと思われるのだが、そこに未曾有の大災害が起こった。結果、その”the pillowsでライブをやるのは楽しいなあ”という感覚がさらに掘り下げられたんじゃないかという気がするということである。敢えて言えば、”オレたちは、どんな状況になってもライブをやり続ける。それしかないんだ”というようなクリアな確信を得て、それを覚悟した、というようなことだ。
この日の最後、「オレたちは音楽を鳴らすことを止めないで、ライブハウスで待ってるぜ!」という言葉に続いて、「ノー・サレンダー」「ハイブリッドレインボウ」という展開は、そのあたりの意識を象徴しているように思えた。そして、ステージ全体から感じられた爽やかさとは、その覚悟をすることで、あらためて自分たちのアイデンティティを確認できた喜びのゆえだったように思う。